GN'R 2007来日!(2)



〈これまでのあらすじ〉
ガンズ&ローゼスの大ファンのJonoさん。「今回の来日公演で、ガンズのこと嫌いになっちゃったらどうしよう……」という心配を胸に抱えていたものの、それはまったくの杞憂に終わり、幕張メッセのライヴは大好評に幕を閉じた。
「もう二度とアクセルの悪口を言わない」などと、どうみても不可能極まりない誓いをうっかりしてしまうほど、Jonoさんにとって、それはそれは素晴らしいショウだったのでございます……。


今宵、人生で二度目の『ガンズ体験』をするべく、意気揚々と九段下の駅に降り立ったわたし。
ここに来る度、爆風スランプの『大きな玉ねぎの下で』を思い出してしまうが、それはガンズと何の関係もないことであるのは言うまでもない。
駅から光るタマネギまでの間、チラシ配りの人たちがいらっしゃる。そしてまたしても、『期間限定ガンズショップ』のお兄さんがチラシを……。
あの……あなたは観ないんですか? 今回のガンズ公演を? それとも14日に観たのかな。もしくは名古屋とか、大阪とか。お休みがとれないってことじゃないよね、まさか。いや、別にいいんだけど……同じファンとして、とてもとても気になります。

到着したときには、すでに前座は終了。
「えーっと……ふたりはもう来てるかな……」
参加メンバーはこの間と同じ、toriちゃんとHちゃん(yanboさんはお仕事につき、残念ながら参加不可)。
チケット番号を確認し、自分のシートを探す。今回は1階席。スタンディング(立ち見)ではないので、遅く着いても自分の席は確保されている。それを踏まえた上での、余裕の会場入りなのだが……。

「あれ? おれの席が……ない?」

近くにいた係員のおねいさんを呼び、チケットを見せたところ……。
「あ、こちらの席は振り替えになりました」
「振り替え?」
「はい。セットを組んだところ、この席からはステージが見えなくなってしまったので、二階席に振り替えさせて頂きました」
「二階席?! 二階席って、この上?!」
「はい」

なんてこった……。

コンサート会場における二階席というのは、通常で言うところの三階部分を指すのである。
つまりこういうこと↓



「あ、じゃ、わたしの席はどこになるでしょうか?」
「まずチケットを引き換えて頂く形になります」
───沈黙。
「あの……それはどこで……」
「この外です」
「(いや、外ってのはわかってんだよ)それはどこで……」
「お客さま、何名さまですか?」
「わたしを入れて三名です。もう先に入ってるか、まだ来てないかはわからないんですが……」
「もし今、お客さまがお入りになると、お友達とは席が離れてしまう形になってしまいますが……」

なんですと?

つまり、こういうことか。席は振替えになったが、それはシート番号に対応しているわけではなく、早く来たモンから、随時入れて行く『早いもん勝ち争奪戦』ってわけで……。
うわーっ、なんてこった!

あわてて友達に電話する。出たのはHちゃん。
Jono「今どこ?」
H「え、新宿ぅ」
Jono「……要点だけ言う。おれたちの席は振り替えになった」
H「ぇえ?」
Jono「振り替え席は二階席だそうだ。早いもん順に入れてる」
H「わかったすぐ行くっ!」

「すぐ行く」ったって、新宿から10分以上はかかるだろう。前座もとっくに終わったというのにまだ新宿に居るとは、ガンズも舐められたもの……いや「どう せ開演時間になんか始まらねぇよ」という記憶を我々に植えつけてくれたのはアクセルなんだから、先にナメたのはあっちの方か……。
そんなことを考えつつ、チケット引き換えカウンターの付近で友を待つ。
振り替えなんざならなきゃ、今ごろ余裕でシートに座っていられたのにな……ああ、せめて椅子にかけたい。座りたい。

振り替えの人々がどんどん二階に上がっていく。そのなかにひとり、ベルリボTの人を見かけた。今回のガンズ公演では『ベルリボとスネイクピット(スラッシュのバンド)のTシャツの奴は入場禁止』という噂が流れていたが、あれはやはりデマだったか。

「まもなく開演ですー!」と、スタッフが叫びだしたあたりで、携帯が鳴った(着メロはベルリボのShe Builds Quick Machines)。

H「もうすぐ着くよー。門越えた」
Jono「門?」
H「あのね、門。何かあるでしょ……門……」
Hちゃんは息切れしている模様。きっと走っているのだろう。
Jono「ああ、あるね、門。オーケイ、入口で待ってる」

電話を切ってすぐ、客電が落ちた。
わっと歓声をあげるオーディエンス。
ああ、まだなのか。早く来てくれ……!
一階席へと続く扉の隙間から見えるのは、ぐるぐると客席を照らすサーチライト。
あと五分もしないうちに、ウェルカム・トゥ・ジャングルが流れるであろうステージ……。

と、そこに……キターーーーぁ!!!!
息せき切って入場するtoriちゃんとHちゃん。
ユーたち、ジャスト間に合ったぜ!
挨拶もなく、チケット引き換えカウンターに走り込む。

さきほど、わたしにチケットの振り替えを宣告したスタッフが、我々を席に誘導してくれる。
「こちらですっ!」
……え? ここは一階席だろ? さっきあなたが「ここは駄目です」言うたところじゃないか、この先は。
戸惑うわたしをヨソに「こちらですっ!」と、小走りのスタッフ。

「え……ここは……この……席はっ!!!!!???」

爆音と共にライヴがスタート。ステージに現れたのはアクセル・ローズ。
ウェルカム・トゥ・ジャングルのイントロに、会場は一気に熱狂の渦へ。
もう大声を出さなきゃ、お互いの声は聞こえない。友達の方を向き、わたしは叫ぶ。

「これっ……桟敷席だろっ!!!(笑)」



要するにこういうこと↓
・我々の席は、二階席に振り替えになった。
・しかし我々がモタモタしているうちに、二階席(振り替え分)はいっぱいになってしまった。
・遅くに来た客は、一階席の一番はじっこ(使用する予定のなかった席)に押し込めることに急遽決定。

それはあり得ないくらいの良いポジション。オペラや歌舞伎であれば、5万円〜10万円はする桟敷席。ローリング・ストーンズのゴールデンサークル席(5万円)はこれと似たような位置だったと記憶している。
我々の他にはたった数人。総勢8人の特別席。広々としているため、踊るなどの大暴れが可能であり、下に転がり落ちそうなほど身を乗り出しても、誰からも注 意されることはない(ここにはセキュリティがいない)。加えてモニターもすごくよく見える(裏から見てるので左右反転映像だが)。

わたしは常々こう思っていた。
「いつかステージ脇からライヴというものを見てみたいものだ」と。
それが今日、ある意味近い形で叶ったのではなかろうか。
先日のライヴはモッシュでぐちゃぐちゃで、あれはとっっっても幸せな瞬間だった。
しかし、これはこれでまた格別の楽しみ方であるのは間違いない。なんたってここからは裏事情がよく見える!
「スモークのマシンってあんな風になってるのか」とか「このあたりにはずいぶんコンテナが多いな」とか「あのピアノは何だろう。予備かな」とか。
「アクセルぅぅ!アクセルぅぅ!」と叫び、踊り狂いつつも、曲の合間合間になると、取材もかくやと観察しまくる。だってこんな機会めったないから。

今回のツアーでその可愛らしさをファンにアピールしてしまった(当社比)ギタリスト、リチャードは、相変わらず一生懸命弾いている。それはもう愛しいまでに。
しかし……彼のプレイを見ていると、「おれでも出来んじゃね?」と、ついつい無礼なことを思ってしまうではないか。
ガンズ&ローゼスのギターは三本。それは普通よりやや多い数。なかでもいちばん何やってるかわかんないのが、リチャードその人のポジションである。
必死にやってる彼には申し訳ないのだが、見るだに「おまい……居ても居なくてもいいんじゃね?(音的に)」と、思えて仕方なし。
もしかしたらきみは『Kawaii!!担当』なのか。アクセルが振り向いたとき、『イジーに似た何か』として、安全毛布のようにそこに立っているのが、きみの役割りか。
いや、そんなことはない。それは失礼というものだ。ここにわたしはきみを応援する。「りちゅーっ!」と叫びまくってるのは、無論きみの名前だ。発音が悪くても気にしないように。

そんなリチ。ひょいとギターを頭の後ろに担いでみせた。
「おお!変則プレイ!ジミヘンか!」
と、思ったら……。


後ろに担いだだけ


だった……。
(本体とネックをしならせて、音を出していたのかもしれない)

わたしの位置、今回の特別席からは、メンバーの後ろ姿がよく見える。
酸素を吸うべくステージ後方に回り込んでいくアクセルの姿や、楽器を換えるメンバーの姿、“後ろに担いだだけ”のリチ技すらも、よぅく見えるというわけだ。

楽器を換える際には、スタッフがあらかじめ用意してあるそれを「ハイ、次はこれ」と、手渡してくれるというイメージがあったが、それは必ずしもそうではないこと、今回の公演で知る。

───リチくん。自分で楽器を取り換えてました。

ギターが立てかけてあるところまでてくてくと歩き、もう曲が始まってるっつーのに「えーと、次の曲に使うギターは……」という感じでそれを選び、「よいしょ」って肩にかけてました。

てゆうか。

もう次の曲が始まってるっつーのに。

ギター三本もあるからいいんだろうけど。

「おまい……居ても居なくてもいいんじゃね?」


とかさ。
思わせられるくらい呑気な感じに見える、リチ。

しかしプレイするとなると一生懸命です。
「ガッ!」とか、「びしっ!」とかの擬音が聞こえてきそうなリチプレイ。それはキース・リチャーズのように、音よりポージング大事のギタリストの系譜。がんばれリチくん。それはわたしの好きな傾向だ。

リチくんとロビンが向かい合ってソロを奏でる。最後にはオデコくっつけハグハグしてて、なにかとっても可愛い絵面。ガンズメンバー、仲良しなんだね。現在 のガンズ&ローゼスは、わたしのかつて愛したそれとは全く違うものであるが、これはこれでもう既に何か芽生えているわけだ。

ギターソロが終わると次の曲へ。楽器を換える間もなく、プレイに入る。
「あ、この曲ではリチャード、ギター取り替えないんだ」と、思っていたら……。
曲も中盤になった頃、リチはゆっくりと裏に消え、「えーと、次の曲に使うギターは……」という感じでそれを選び、「よいしょ」って肩にかけてました……。



ほんとうにきみの音は必要なのか?



それともライヴってこれくらい呑気なものなのでしょうか。
他にもロビン(だったかな?)が、間違えてギター選んだかしたらしく、スタッフがそれをあわてて取り替えるという一場面も。(もしくは弦が切れたか)

いつもだったら気付かないようなところに、やたら気付くことができる今日のシート。
ステージ後方に、洗濯バサミ(?)でタオルが止めてあって、それでアクセルが顔を拭いているとか。なんかやたら鼻かんでるアクセルとか。
そういうネタは多々拾えど、やっぱり横っちょの席なんで、メンバーはあさっての方角を向いている(←“我々から観て”という意味。いわゆるキチンと前を見てます、彼らは)
さすがにちょっと寂しいぞと思っているところに、やってきました救世主。ロン・サールがこっちに向かって意思表示をしてくれた!



いいひとっ!


一気に上がるバンブル株(ジャスダック調べ)。
たった8人ぽっちの為に、わざわざこっち歩いてくれて弾いてくれるなんて! 他のメンバーも我々の席に気付いてはいたが、二度もわかりやすいパフォーマンスをしてくれたのは彼だけだった。ありがとうヒゲおやじ!

美しい旋律による戦慄。『ドント・クライ』が始まった。
やばい、おれの涙腺が……。こないだの幕張でも泣かされたんだから、もういいっての。あのときは汗まみれだったし、少しぐらい泣いていてもわからなかった が、ここはちょっとな。そもそも二度も泣かなくたっていい。でもああ……アクセルの歌声は……やばいです、やばい。
と、感情の決壊を避けるべく、葛藤していると……。
「ん?」
歌をうたっているアクセル。右手にマイク。左手は背中に。
「アクセル、いったいなにを……」




涙ひっこんだよ!




わたしのふたつ隣にいた兄さんが「カユかったんだ……」と、つぶやく。
うん、そうね。カユかったのね。背中が。
どんなに感動的な曲を歌ってる最中であっても、カユいときはカユいよな。
背中カユい2007 in 武道館。思う存分掻くがよい。

最後には紙吹雪。それをステージ側から見るというのも不思議な感じだ。
素晴らしいコンサート。素晴らしい観客。
わたしが観たガンズ&ローゼスは、なんだかとてもいいバンドだった。
最後にアクセルが言った「We hope to see you again!」
それを信じられるほどに、信頼を回復させてくれる仕事をきみはした。
ファンとして前に進める機会をありがとう。やっぱりバンドはプレイしてこそだ。もうきみのこと「無職」とか言わないよw

PS.
終演後、ガンズショップのお兄さんはまだチラシを配っていた。
今回の来日公演、観たんですか。観なかったんですか。気になる。
(後日、ご本人に確認しましたところ、観なかったそうです。カワイソス……)


2007.7.16

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